本年FIAC(パリ国際現代アート見本市)はグラン・パレ・エフェメールを会場に2021年10月21日(木)から10月24日(日)までの会期中、170もの世界の名だたるギャラリーを集め、同時にオンライン版も継続して開催されました。
Artprice創立者ティエリー・エアマンは次のように述べています。
「FIACオンラインは、必ずしもメインイベントとは言えないでしょうが、さらに40のギャラリーを追加で集めており、美術界の根本的な変化を反映しているといえます。その変化とともにあるのは、FIAC、そしてヴァンドーム広場でのAlexander Calderの素晴らしい彫刻作品の展示をはじめとする会場外での展示やインスタレーションの数々からなるフィジカルな市場と、完全オンラインで誰もがFIACヴューイングルームにアクセスすることで自宅から訪れることのできる市場という、二つの市場の併存です」
Robert Delaunay《La Tour Eiffel》(1928)
過去6か月にわたり、美術界はブロックチェーンについて非常な盛り上がりを見せてきました。このテクノロジーは2021年3月に、ビープルのNFT《Everydays》がニューヨークのクリスティーズで6,940万ドルという価格で落札されたオークション界でのデビューを皮切りに、サザビーズでのPakのNFT、フィリップスにおけるマッド・ドッグ・ジョーンズのNFTの販売が続き、いずれにもメディアのコメントが集中、21世紀初頭における芸術的創造とその流通についての概念を根底から揺り動かすことになりました。しかしArtpriceによる2021年上半期のアート市場報告書では、全世界の一流アートオークション売上高に占めるNFTの公開販売の額は全体のわずか2%に過ぎず、さらにこれはニューヨーク(90%)と香港(9%)に分かれたニッチな市場であり、2021年上半期全体でもロット数は100に達していないことを指摘しています。すなわち絵画の伝統的な市場は、NFT市場と比較すると35倍もの規模にいまだとどまり続けています。
例年同様、パリはジャックマール・アンドレ美術館のボッティチェッリからポンピドゥーセンターのゲオルク・バーゼリッツとジョージア・オキーフまで、またフォンダシオン ルイ・ヴィトンのモロゾフ・コレクションや新規オープンのブルス・ド・コメルスのピノー・コレクションまで、美術史全体をほぼカバーするほどの並外れたラインナップを誇る展示を迎えています。また、アルミン・レックとペロタンギャラリーでは、今日のフランスにおける芸術的創作を代表する才能のひとり、クレア・タブレットの作品展示が行われています。このほかレヴィ・ゴービーとナタリー・オバディアの2つのギャラリーでは、アフリカ系アメリカ人アーティスト、ミカリーン・トーマスの作品を見ることができます。
オークション落札額別 存命フランス人アーティストトップ3(2021年上半期)
本年度のマルセル・デュシャン賞がリリ・レイノー・デュワーに授与されたことにも表れているように、パリは折衷的であること、先進的であることを志向しています。そんな中、サン・キャトル パリでは、第4回国際デジタルアート・ビエンナーレが目下開催中です。
一方フリーズフェア会期中のロンドンでは、バスキア、リヒター、そしてホックニーの良作のオークションが成功を収め、地元市場に一定の安心感をもたらしました。2018年に140万ドルで落札されたのち、バンクシー自身によって一部が細断された、かの《Girl with Ballon》が《Love is in the bin》と名を変えて再登場したことは華々しい「イベント」となり、同作品は2,540万ドルという際立った結果を収めました。パリでは、FIACの会期中、マグリット、マネ、ピカビアなどのアバンギャルドな良作の販売が試みられたものの、クリスティーズやサザビーズから出品されるロットに、ロンドンほどの高値が予想されているものは含まれていません。各ギャラリーがFIACの会場、そして自らの店舗で素晴らしい現代アート作品を展示する一方、オークションハウスからは、パリがかつては長きにわたり芸術の都であったというメッセージが伝えられ続けています。