未来ものづくり振興会は、新しいプロダクトのデザインを募る「16th SHACHIHATA New Product Design Competition (シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション)」に関して2023年10月13日(金)に表彰式を行い、受賞作品9点を発表しました。第16回目となる今回は、中村勇吾、原研哉、深澤直人、三澤遥の4名の審査員、ゲスト審査員の武井祥平および特別審査員舟橋正剛の計6名で厳正な審査を実施しました。
今回は、「思いもよらないしるし」をテーマとし、しるしの概念の根底に立ち返ることで生まれる価値や、見落としていたしるしの意味に気づかせてくれるような存在、そんな本質的な驚きを感じられるしるしを表すアイデアを募集しました。その結果、国内外から過去最多となる1,287点の応募があり、そのうちの9点を受賞作品として決定しました。
出会いの瞬間の「お!」をしるせるデバイスです。自転車での移動中に見つけた、いい感じのカフェ、素敵な景色など、心が揺さぶられた瞬間に「!」ボタンを押すだけで、急いでいても両手が塞がっていても、その場にしるしを残せます。連動するアプリ上には自分だけの地図が出来上がります。
ロウソクの火を吹消した後に、ロウソクを抜くと生まれてしまう、ケーキの上の穴。せっかくのお祝いのケーキにできてしまったその穴を、装飾の一部にしてしまうキャンドルホルダーの提案です。ロウソクをケーキに挿すという行為に、しるす感覚を加えたいと考えました。
卒業式に先生から手渡される初めての印鑑。多くの学校では卒業のタイミングに印鑑が記念品として選ばれるが、その際に最適なデザインを考えました。彼らの門出を祝って贈られるのは、卒業証書に模した印鑑です。
コップに付着した水滴が落ちることで、にわかに色づき、美しい模様が広がるコースターです。その日の気温などによって、一度きりの模様が現れます。普段は気に留めない結露という現象がしるしとなって、日常に思いがけない彩りをもたらします。
トマトソースをこぼしてしまった、テーブルクロスや白いシャツ。シミをじっと眺めていると、まるで朱色のしるしのように見えてくるかもしれない。慌てて拭きとる前に、ネガティブな出来事をポジティブに楽しめる「なまえのあるパスタ」をデザインしました。
柔らかい素材でできたハンコです。一般的にハンコは平面に押すことが多いものですが、この提案では紙箱の角や凹凸のある面などにフィットし、立体的に印字できます。ハンコの使い方の可能性を広げ、思いもよらないところにしるしがつけられるかもしれません。
小学生からパソコンに触れ、プログラムを学ぶ昨今。普段目にする色の名前ではなく、RGBで色を表す水性ペンによって、色の仕組みについて学習する効果もあります。
防犯意識の高まりから表札を掲げない住宅が増えていますが、本来は家庭のシンボルとしての役割も持ちます。この表札は普段は平滑な状態で住宅の景観に溶け込みますが、訪問者が来るとセンサーに反応して名前が現れます。現代に合わせた表札のかたちです。
同じ問題を何度も間違えると、気持ちが落ち込むかもしれません。この提案は、バツ印の印影を重ねることで、それらがきらめく大きな星へと変化していくスタンプです。本来否定のしるしであるバツが、星という希望にみちた「思いもよらないしるし」となります。
第16回シヤチハタ・ニュープロダクト・デザインコンペティション(SNDC)は、前回を大きく上回る1287件の提案が集まりました。テーマの『思いもよらないしるし』の解釈は、偶発的に起きる出来事や、見落としてしまいそうな瞬間などさまざまでしたが、造形的なデザインだけでなく行為に焦点を当てた提案も多く、審査会は議論が白熱しました。また、初めての試みとして、ゲスト審査員の制度を設けました。今回はエンジニアの武井祥平を迎え、デザイナーとは違う視点が審査に加わったと同時に、応募アイデア自体の傾向として、テクノロジーを活用する提案も増えた印象です。最終審査会に可動するモックアップが数多く集まったのも新鮮でした。シヤチハタらしいハンコをベースにしたアイデアから、全く新しいプロダクトまで、多様な可能性のある提案の応募が寄せられました。