このチュール布(ぬの)を揺らせ。
- 説明
2023年
チュール布・水性塗料・綿糸・葦
20.4×15.0×6.0 cm
一般的に、書における文字や言語は、意味内容やイメージを表す表象として機能する。しかしこの作品に書かれているのは、真言密教で唱えられる呪文(真言)である。呪文は、人間の意識や思考の中で処理されるための表象ではなく、何らかの他者に対して働きかける力を持つ存在・行為者と見なすことができる。薄くて軽いチュール布は、空調の風や人がそばを通るときに起こる気流で微かに揺れる。文字が書かれた媒体が揺れる事でその文言が唱えられたのと同じ事になるという考え方は、チベットのタルチョからの引用である。チュール布が括り付けられているのは葦の茎を割ったもので、これは行為者たる呪文に対して作者が用意した座・居場所である。